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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

10月20日東京国際フォーラムにて「第4回持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

北海道下川町・ニセコ町、岩手県二戸市・葛巻町、鳥取県北栄町、熊本県小国町の6自治体で、「課題解決型自治体アライアンス事業」モデルとして国の加速化交付金を受け、各自治体での取り組みが行われています。今回は、「里山資本主義」著者の藻谷浩介氏から「地方創生」についてのレクチャーのほか、小規模地域における公共交通の話から再エネの話まで専門家にお越しいただき、盛りだくさんの内容で持続可能な発展を目指す自治体会議(通称:持続会)を開催しました。

今回は年に一度の持続会オープン(公開形式)ということで、上記6自治体の町長、副市長、副町長、役場の担当の方々のほか、クラブヴォーバン(以下CV)法人会員、非会員自治体の岩手県雫石町の町長、群馬県長野原町の副町長も参加されました。

 

第一部の特別講座では、前職で長野県のエネルギー政策に携わっていた自然エネルギー財団の田中信一郎氏から、県としてエネルギー自立や再エネ政策に積極的に取組んでいる長野県における取組みの特徴についての話がありました。次にCV代表の村上敦より、今後少子高齢化で人口減少の局面を迎える自治体が、上下水道などのインフラ維持や住民の交通手段を、どのようにコストを抑えつつ確保していくか、ドイツの事例を元に集住化やコンパクト化をベースとしたまちづくりについての提案がありました。次に日産自動車モビリティ・サービス研究所主管研究員の藤本博也氏から、欧州や中国・韓国・インドネシアの公共交通・施策のシフトや最近のトレンド、まち中心部に人を呼び人が集える仕掛け、小規模自治体目線から考えた将来の移動手段や目指すべき方向性の話がありました。

 

第二部の本会議では、CV会員自治体のうちの3自治体から最近の取組みの報告。北栄町の西尾浩一副町長からは、今年度省エネ改修をテーマにエコ加算制度を策定し、町直営の風力発電所の売電収入の一部から遮熱などの改修に補助金拠出について紹介。ニセコ町建設課都市計画係長の金澤礼至氏からは、公共建築の改修・新築、民間建築の改修・新築それぞれのカテゴリで、どのような断熱工事に対し交付金や補助金を出してきたのか、具体的な断熱効果を現す数値とともに事例紹介。人口が急増中のニセコ町では、今後町で定める断熱・遮音性能などを満たし性能表示を行うものについて建築費を補助し、町内の民間賃貸住宅の良質なストック形成と市場適正化をはかるそうです。

 

下川町の環境未来都市推進課地方創生推進室室長の簑島豪氏からは、地域熱供給施設を中心とした、各公共施設やコミュニティセンターやカフェ、集住化住宅、EV充電器による ①エネルギー自給の向上②環境配慮建築の導入③地域資源の活用による新産業創造④集住化による自立型コミュニティモデルの創造 について。また、地区ごとの10年後の人口動態の数値を具体的に算出、就農・定住を目指す若者と離農したい高齢者を相互支援し、離農後もこの地域に住み続けたい高齢者は町の集住化住宅へ移住、共同菜園で農業を続けられるようにといきがいの創出も行っています。

 

次に、「里山資本主義」の日本総合研究所主席研究員藻谷浩介氏からは、当日前後の講演の合間を縫ってお越しいただき「地方創生の考え」について。「CV村上さんおよび持続会の活動は極めて重要だと思うので、ぜひ会員が増えるようにお話ししたい」とのお言葉もいただきました。いくら地域が稼いでも、銀行にお金をためるだけや地域振興にならない使い方をしていては、サステナビリティがないこと、また、具体的な人口動態を元に、少子高齢化は田舎ではなく地方の都市部でこそ急速に進んでいることが示されました。地域の活性化に必要なことは、交通の便を更によくすることでも工場を誘致することでも好景気不景気と騒ぐことでもなく、「人口が減らなくなること。」「若者が戻ってきて、子どもが生まれ続けること。」「誇りを持って地域を残すこと。」この3つだとの指摘がありました。自動車工場のある豊田市や原発立地自治体でも、労働可能世代の人口は減少し高齢化が進行している一方、高齢化しても人口構造が安定している北海道西興部村や島根県隠岐島の海士町では、若年層の出生増による人口増加や青年層のUIターンや島留学受け入れで人口増をはかっている例が紹介されました。会員自治体のニセコ町は、人口が急増中(外国人だけではない)なのは、食材も建材も道の駅もニセコ町産のものだらけで地元にたくさん仕事があるからで、「地域内でお金を回す超優良なまち」と評価されていました。


次に龍谷大学リサーチセンターの櫻井あかね氏から、再エネ事業を誰が担い、自治体が何をして、どうやって地域のお金を地域に振り向けていくのか、という視点での発表がありました。太陽光のメガソーラー発電所と風力発電所を例に挙げ、住民とのトラブルや景観などの問題に配慮しつつ、地元資本で発電し、再エネの利活用の利益は地元に還元して地域内で資金循環を創出するために、地域住民が議論して決定・実行していく自治力が必要のとこと。地元に利益が還元されている再エネ事業の成功事例紹介がありました。


立命館大学経営学部教授のラウパッハ・スミヤ ヨーク氏からは、再生可能エネルギーによる地域の経済的付加価値を数値化・見える化をするためのドイツの評価ツールの日本版モデル(京大や環境エネルギー政策研究所などとともに構築)を使った事例研究の発表。「地域の付加価値」=「事業に関わってきた人たちの所得+事業者の利益+地方に落ちる税金」。このモデルによる試算では、長野県では2000~2034年度累積で再エネ事業への補助金がたった50億円だが、6300億円の売上げ、600億円もの地方税増収、売上げの約25%の1500億円が、地域の付加価値になるとのこと。このようなツールを使って、自治体の政策策定に活かすべきではないかと提案がありました。

持続会では、会員自治体が順番でまちアピールをする機会があります。今回は岩手県二戸市副市長の大沢治氏より、二戸ブランドの地酒や漆、国名勝の馬仙峡や折爪岳のヒメボタルの乱舞、3年先まで予約いっぱいだった座敷わらしが出ると人気の金田一温泉郷の旅館再建の話、りんごやさくらんぼ、雑穀や短角和牛などの市の逸品などのまち自慢。続いて、地域経済循環への仕組みづくりとして、省エネルギー住宅「二戸型住宅」の取り組みを行い、市民対象のエネルギーシフト・省エネ住宅の啓発を行っている話がありました。昨年から今年にかけ、CV村上、今泉などが講演会を行いましたが、今後ガイドラインを策定して市民向けに啓発を行い、市としてはガイドラインに沿った住宅建築に対し支援を行っていく予定で、低燃費住宅モデルハウスの性能(外皮平均熱還流率UA値0.28W/㎡K)を目指すとのことでした。これに対し、代表の村上から、「自治体のガイドラインで具体的な目標数値《UA値0.28W/㎡K》を掲げるところがこれまでなかったので、ここがすごく重要。北海道では例があったが、UA値0.4~0.7W/㎡Kだった」とのコメントがありました。

 

クラブヴォーバンでは、会員自治体を相互視察したり、本音のところで自治体が抱えている悩みをディスカッションする機会を設けたりしています。会員自治体が内閣府の地方創生加速化交付金を受けているため、今後域内経済好循環モデルの構築についての取組みの加速化や数値化・見える化の具体策を、会員自治体の皆さんと共に考え全力で支援していきます。