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PJ80セミナー東京/関西「ドイツにおけるワーク・ライフ・バランス~ 仕組みが充実した生活を ”日常” にする ~」を開催しました

最近、「働き方改革」が日本で話題になっています。「過労死・過労自殺」「ブラック企業」「職場うつ」など、日本では世界的に見ても、長時間労働や厳しい労働環境が問題になっています。

今年度のPJ80セミナーは、8月23・24日に関西と東京で開催。クラブヴォーバンのプロジェクトメンバーの、ドイツ在住で環境建築や環境都市計画コンサルの仕事と子育てを両立しながら毎日充実した暮らしを送っている“イクメン”の二人から「ワーク・ライフ・バランス」をテーマとしたレクチャーでした。  

日本とドイツ両方の建築事務所で働いた経験のある、建築家の金田真聡からは「日独の現場からみるワーク・ライフ・バランスの違い」について。ドイツの「人に頼らないしくみ作り」を評価し、日本の長時間労働の問題点を「個人の能力のせいにしたくない」と訴えました。ドイツでは、Health(睡眠)・Life(家庭)・Work(仕事)が一日のうちそれぞれ8時間ずつのバランスで、WorkよりLifeの方が大事、という感覚が一般的だそうです。

日本では、「働き方改革」と言いながら、長時間労働がよしとされる「カルチャー」や「社会システム」の議論で終わりがちですが、「ビジネスモデル」の話にまで議論が及びません。ドイツのオフィスが、築年数の経った古いオフィスビルでも、内部は洗練されたお洒落な空間で美しく整理されており、社員同士のコミュニケーションが弾む場も提供されているとのこと。また、仕事の電子データの徹底したフォーマット化・階層化・体系化による管理により、社員が誰でも、長期休暇を取りやすい職場体制が取られているとのこと。そのために、専任のパトロールのような情報管理の職員も配属されています。また、部下が1日8時間以上の仕事をしなければならない状況は、本人のせいではなく上司のマネジメントがまずい、ということになります。

またドイツでは、個人の仕事の役割と責任の範囲が明確なので、残業をせず時間内にパフォーマンスを上げてアウトプットを出す必要があるとのこと。なので、ドイツでは「自己責任社会」だが、日本では役割も責任の範囲もあいまいなまま長時間労働拘束される「自己犠牲社会」だと思う、とのこと。「ワーク・ライフ・バランスは、時短や22時共生消灯など働き方の問題ではなく、経営の問題。」ドイツのような経営スタイルにシフトしていくことで、日本の働く人たちも、長時間労働から解放されていくのではないか、とのことでした。

 続いて、建築・都市地域計画コンサルタント、永井宏治からは「ワーク・ライフ・バランスを実現する都市と地域の仕組み」について。永井もドイツの企業で勤めた経験から、「企画から設計・施工管理まで、ドイツでは最低二人以上の体制で、リスク管理上、一人に何かを任せるということはあり得ない。それぞれの段階で何時間かかるかを月ごとに見積もり、生産性を高めるしくみが普通」とのこと。

またドイツでは、建築・都市計画において、低コストでかつ静かで暮らしやすい、市民のライフクオリティーを高めるまちづくり・インフラづくりが行われているそう。例えば、日本の都市部は、戸建て一軒家が多いが、ドイツより圧倒的に緑や庭が少なく、居住面積が同じ広さの町でも道路はドイツの2倍の長さ。道路を作るのは国だが、維持管理は将来に渡り市町村の負担。今後少子高齢化が進み税収が減る中で、日本は道路だけでなく上下水道も含め、インフラのコストが高くつく設計になっています。

ドイツでは、戸建て一軒家ではなく集合住宅が多いが、集合住宅の近隣の家へはもちろん、同じ住宅の中の隣の部屋にも、音が聞こえないようプライバシーに配慮された建築が一般的。「住宅地は静かでなければならない」と、住宅地は、日中50DB/夜35DB以下と決められ、州ごとにどの地区がどれくらいの音がするか、色付けされた「騒音MAP」がデジタル化され公開されているので、住む家を探す時の重要な判断材料になります。

そして、基本的にドイツでは、土日と夜18時以降は、仕事はオフ。今住んでいるドイツのビーレフェルトのまちは人口30万人だが、動物園や温水プールが無料や格安で、公園や道路にベンチや遊具も多くて、インフラが整っているので子育てしながらとても住みやすい街だそうです。

 

クラブヴォーバンの法人サポーターの参加者で、会社経営者の方々から、「ものすごい経営のヒントになり、とてもいい内容だった」「もっとたくさんの経営者にも聴かせたかった」との感想が寄せられました。