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7月17日PJ100セミナー「2050年 脱炭素戦略社会に向かって 日本政府のGXの進捗状況は?」を東京とZoomにて開催しました

2022年7月に日本政府が『GX実行会議』を設置してからちょうど2年。『GX実現に向けた基本方針』を閣議決定したのが2023年2月。1年半近く経ったいま、政府の取り組みによって実際のところ、どのくらい脱炭素が進んでいるのでしょうか。また、政府が行うべき内容について、その文脈を取り間違えなければきちんと社会が脱炭素の方向に向かうだろうが、文脈を読み間違うと、地域で正しい方向に思い切った投資ができません。このような状況において、代表の村上が、国が本来目指している企みや文脈を解説し、GXの中でも特に私たちの暮らしと直接関わる「建物断熱・太陽光・蓄電池・自動車」などを対象とした「くらし関連GX」関連について、民間で何ができるのか参加者の皆さんと議論を行いました。

 

日本は2013年比で、2030年までに46%のCO2排出量削減を掲げていますが、2022年時点でまだ約20%しか削減できていないので、あと約8年で残りの25%を削減しなければなりません。50%削減の高みを目指すというのも目標としてはあるので、その場合は30%の削減の積み上げが必要です。

 

「GX」これは「グリーン・トランスフォーメーション」の略で、これまでの各省庁がパラパラと推進しているのではなく、国が中心となり2022年度から始まっている本丸の制度です。「トランスフォーメーション」は「チェンジ」ではありません。ただ「変わる」のではなく、さなぎが蝶に羽化するような、仕組みがまったく変わるような文脈で使われることが多いので、Xという頭文字を充てています。

 

GXの枠組みは、脱炭素社会に向けた経済起爆剤として20兆円の先行投資支援を国が行い、150兆円を超す官民投資を促すことを狙っています。先行投資の20兆円は、移行債を財源とするので、今後その費用を回収していく必要があります。スキームとしては、化石燃料から早く移行した人たちへ補助を伴って投資を促し、移行しなかった人たちが化石燃料を割高で購入することによって後からツケを払う仕組みなので、会社経営している人でも、自治体でも、一般の方々も、早く脱炭素シフトすべきです。

 

日本のエネルギー自給率は非常に低く、現在は日本円が弱いので、2022年には34兆円という大金が、エネルギー購入のために日本から海外に流出しています。とはいえ、再エネに転換しても、別のリスクがあります。2023年のIEA国際エネルギー機関による2030年のクリーンエネルギーのサプライチェーンの予測によると、日本の現状では、再エネ技術等も海外に依存しなければならない状況です。それゆえ、再エネを推進しつつ、省エネは国内でしっかりと進めなければなりません。

 

日本全体のCO2排出量約10億トンのうち、約32%が建物からの排出です。東京電力が試算し公表しているグラフ「2050年カーボンニュートラルコスト曲線」に、脱炭素社会に必要な技術がCO2削減1トンあたりのコストの安い技術から順番に表記されています。それを見ると、再エネ発電以上に「建物の断熱」が最も安価でCO2削減効果が高い、コスパに優れる技術です。2番目のコスパに優れる家庭や業務部門のオール電化は、ひと昔の”オール電化”とは違い、太陽光で発電した電気を自家消費し、電気ヒートポンプで必要な熱に転換したり、乗用車等のEV化を推進する取り組みです。

 

今年の5月には、さらにGXを加速させるための具体策が検討され、液体水素運搬など新技術への支援の話も上がっていますが、「くらし関連部門」では相変わらず、①家庭の断熱窓への改修 ②高効率給湯器(ヒートポンプなど)への入れ替え ③電動者/蓄電池の導入支援 が支援対象で、2000年頃から家庭や事業所でやるべき脱炭素対策と変わるところがありません。今後もこの対策は変わりようがないため、それをGXで支援するようになっていますから、各自も経営成長戦略として推し進めることが大切です。

 

 経済産業省サイト より

 

また、環境省は2022年度から、地域の脱炭素化事業に意欲的に取り組む自治体に、複数年度にわたり支援する「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を創設しています。2023年度には、自治体が脱炭素化の取組を計画的に実施できるよう、新たに「脱炭素化推進事業債」が創設され、3年間の支援する自治体は確定済。あとどれくらい新規で受け付けられるかはわかりませんが、ZEB/PV主力の再エネ/LED化/EV化などに使える補助金ですので、ぜひ脱炭素化を進めたい自治体さんは活用してください。

 

質疑応答の中で、最近は新聞などのメディアで水素やアンモニアなど新技術による発電が大きく取り上げられるので、そこに脱炭素をめざす自治体や中小企業が飛びついてしまうのではないか、という問題提起がありました。水素やアンモニアによる発電は開発中で、安価で安定した確立済みの技術ではまだなく、開発支援をするとしても大企業と国がやるべきことであり、そこに中小の自治体が入りこむ余地はまずありません。コストパフォーマンスを考えれば、より安く早く脱炭素化できる確立した技術「公共施設のZEB化・域内の住宅などの断熱・太陽光発電・蓄電池・EV化」を自治体はまずは早急に進めていくべきで、それをやり終えた上でまだ余裕があるならば水素などを考えればよいだろうという議論になりました。

 

それゆえ、マスコミはもっと「くらし関連GX」の部分について、メディアに大きく取り上げてほしいという意見も出ました。

 

いずれにせよ、建物をまずは断熱し、電化し、PVによって再エネ化していくことが大切です。今年4月からは、新築建物の省エネ性能ラベル表示制度の努力義務化も始まっています。将来的には義務化され、新規だけでなく既存住宅にもこの動きは広まっていくでしょう。今後もクラブヴォーバンではCO2排出ゼロ社会に向けて、ネットワークの力を活かしてPJ100(プロジェクトCO2排出100%削減)を進めてゆきます。