2024/10/09
今回は、現在各省庁や自治体の脱炭素や地域エネルギー、まちづくりなどの検討委員やアドバイザーとしてご活躍中の稲垣氏を講師に迎え、全国で進んでいる脱炭素社会に向けた脱炭素施策の自治体事例などについてお話いただきます。...
2024/09/04
2022年7月に日本政府が『GX実行会議』を設置してからちょうど2年。『GX実現に向けた基本方針』を閣議決定したのが2023年2月。1年半近く経ったいま、政府の取り組みによって実際のところ、どのくらい脱炭素が進んでいるのでしょうか。また、政府が行うべき内容について、その文脈を取り間違えなければきちんと社会が脱炭素の方向に向かうだろうが、文脈を読み間違うと、地域で正しい方向に思い切った投資ができません。このような状況において、代表の村上が、国が本来目指している企みや文脈を解説し、GXの中でも特に私たちの暮らしと直接関わる「建物断熱・太陽光・蓄電池・自動車」などを対象とした「くらし関連GX」関連について、民間で何ができるのか参加者の皆さんと議論を行いました。 日本は2013年比で、2030年までに46%のCO2排出量削減を掲げていますが、2022年時点でまだ約20%しか削減できていないので、あと約8年で残りの25%を削減しなければなりません。50%削減の高みを目指すというのも目標としてはあるので、その場合は30%の削減の積み上げが必要です。 「GX」これは「グリーン・トランスフォーメーション」の略で、これまでの各省庁がパラパラと推進しているのではなく、国が中心となり2022年度から始まっている本丸の制度です。「トランスフォーメーション」は「チェンジ」ではありません。ただ「変わる」のではなく、さなぎが蝶に羽化するような、仕組みがまったく変わるような文脈で使われることが多いので、Xという頭文字を充てています。 GXの枠組みは、脱炭素社会に向けた経済起爆剤として20兆円の先行投資支援を国が行い、150兆円を超す官民投資を促すことを狙っています。先行投資の20兆円は、移行債を財源とするので、今後その費用を回収していく必要があります。スキームとしては、化石燃料から早く移行した人たちへ補助を伴って投資を促し、移行しなかった人たちが化石燃料を割高で購入することによって後からツケを払う仕組みなので、会社経営している人でも、自治体でも、一般の方々も、早く脱炭素シフトすべきです。 日本のエネルギー自給率は非常に低く、現在は日本円が弱いので、2022年には34兆円という大金が、エネルギー購入のために日本から海外に流出しています。とはいえ、再エネに転換しても、別のリスクがあります。2023年のIEA国際エネルギー機関による2030年のクリーンエネルギーのサプライチェーンの予測によると、日本の現状では、再エネ技術等も海外に依存しなければならない状況です。それゆえ、再エネを推進しつつ、省エネは国内でしっかりと進めなければなりません。 日本全体のCO2排出量約10億トンのうち、約32%が建物からの排出です。東京電力が試算し公表しているグラフ「2050年カーボンニュートラルコスト曲線」に、脱炭素社会に必要な技術がCO2削減1トンあたりのコストの安い技術から順番に表記されています。それを見ると、再エネ発電以上に「建物の断熱」が最も安価でCO2削減効果が高い、コスパに優れる技術です。2番目のコスパに優れる家庭や業務部門のオール電化は、ひと昔の”オール電化”とは違い、太陽光で発電した電気を自家消費し、電気ヒートポンプで必要な熱に転換したり、乗用車等のEV化を推進する取り組みです。 今年の5月には、さらにGXを加速させるための具体策が検討され、液体水素運搬など新技術への支援の話も上がっていますが、「くらし関連部門」では相変わらず、①家庭の断熱窓への改修 ②高効率給湯器(ヒートポンプなど)への入れ替え ③電動者/蓄電池の導入支援 が支援対象で、2000年頃から家庭や事業所でやるべき脱炭素対策と変わるところがありません。今後もこの対策は変わりようがないため、それをGXで支援するようになっていますから、各自も経営成長戦略として推し進めることが大切です。
2024/06/11
2022年7月に日本政府が『GX実行会議』を設置してからちょうど2年。 『GX実現に向けた基本方針』を閣議決定したのが2023年2月。 1年半近く経ったいま、政府の取り組みによって実際のところ、どのくらい脱炭素が進んでいるのでしょうか?...
2024/03/05
クラブヴォーバンが2008年から必要性を訴え続けてきた「建築物の省エネ表示制度」が、この日本でも実現することになりました。2024年4月1日より、これまで適合義務のなかった新築の小さな住宅まで、賃貸や分譲で市場に出される際は、建物の省エネ性能表示が「努力義務化」されます。それに先駆け、今回のPJ100セミナーでは代表の村上とこの制度と業界に詳しい晝場氏から、制度と省エネ表示の内容・建築や不動産など業界への影響・CO2排出量削減への影響などについて解説する会となりました。 まずは代表理事の早田より挨拶。代表の村上とともに、建物の省エネ性能の評価・表示をしようと2008年より動き始め、日本エネルギーパス協会を設立したのが震災後の2011年。そして今は既に2024年。建物の省エネ性能や性能表示について、日本は諸外国に比べ非常に遅れています。我々は16年、ずっとこの建物の性能評価・表示制度が必要と言い続けてきたが、まだまだ国の動きが遅いのでこれからも言い続けやっていくしかないと思っている、とのことでした。 次に代表の村上より、この制度の全体の流れ、評価方法、評価書の発行方法や内容、不動産や建築など業界への影響などの概要説明がありました。また、日本で先駆けて建物の性能評価・表示の普及活動を行ってきた村上がこの制度を見て、評価できる点、まだこれから改善が望まれる点などについても言及がありました。 住宅性能を評価・表示するためのプログラム(今はまだドラフトバージョン)が、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会のWebサイトで公開されています。クラブヴォーバンが関わっている、北海道ニセコ町のSDGs未来都市モデル街区で今年3月に分譲される集合住宅の数値を実際にサイトで入力し、評価ラベルを仮発行してみました。すると、UA値が0.17、再エネを含むBEIが0.47、エネルギー消費性能で6つ星の最高レベルで、性能評価・表示されました! 冬場―10℃を下回るニセコの豪雪地帯の物件ですが、目安の年間光熱費は年間17.8万円。最高基準の省エネ住宅と評価されました。それらの入力や出力の方法を実際に皆さんにお見せしながら、評価ラベルの見方やそれぞれの項目の意味について、解説を行いました。
2024/02/28
前回は、第7回目の持続会正会員自治体相互視察を兼ねて、北海道下川町で「人口減少と移住・農村の暮らしのインフラ」をテーマに持続会を東京とオンラインで開催しました。下川町は、町の面積の約9割を占める地域資源の森林を最大限・最大効率に活用することを掲げています。循環型森林経営を基軸として、森林総合産業の構築、超高齢化社会にも対応した新たな社会システムの構築、森林バイオマスなどの再生可能エネルギーを活用した地域エネルギーの完全自給と脱炭素社会構築をも目指し、「持続可能な地域社会(森林未来都市)の実現」に向けた取り組みを進めています。また、全産業の共通課題となっている人材不足に対応するため、下川町産業活性化支援機構を立ち上げ、毎年約30人(総人口の1%)が移住し、2016年以降は、20代から40代までの年齢階層では転入超過傾向にあります。 今回は前回に続き「移住と住宅インフラ」がテーマ。自治体の皆さんには課題として「将来の世帯数」「住宅ストック数」を調査していただき、将来の世帯数に対し住宅ストック数が足りるかの予測について発表がありました。少子高齢化と核家族化が進み一世帯あたりの人数は減少しているので、世帯数は人口減少の速度に比例せず将来大きくは減りません。一方、全国で移住先として人気のある自治体では、年々一定数の移住者が流入し状態のよい空き家は既に不足しつつあります。せっかく町で移住促進をしたり仕事を創出したりしても、域内に住める手ごろな住宅がなければ若い人たちも住めず移住者も入ってきようがありません。代表の村上と、田中信一郎氏からは、自治体において脱炭素化を加速させながら、域内の全ての人が安心して暮らせ移住者も増やしていけるまちを実現するために、全国での事例共有や、自治体・自治体職員として何ができるかについてのレクがありました。
2024/02/28
前回は代表の村上より、CVの基本的な考え方である「kWh=¥」のおさらいと、昨今の各エネルギー価格の高騰の背景や今後の見通し、自治体において率先して行うべき省エネ対策、脱炭素先行地域の選考状況についてなど話題提供がありました。将来的にまちのコンパクト化や住んでいる人のある程度の利便性・快適性考える場合に、高性能・脱炭素型の集合住宅(できれば賃貸住宅)が今後必須となります。これまで公共からの住居に対する補助は、個人の持ち家か、持ち家が持てない人には公営住宅、という2本立ての支援でしたが、今後は民間賃貸住宅などへの公共の支援も必要になってくるとして、いくつかの事例が共有されました。
2024/02/22
今回は、新橋現地開催&オンラインにて、理事の田中健人氏による「持続可能なまちづくりに地域を巻き込むためのマーケティング講座」でした。田中氏は、北海道札幌市を拠点に、企業や自治体、金融機関などを対象に、主に情報発信のサポートする会社を経営。WEBや映像、VRなどのコンテンツ制作や、SNSやWEBを活用したマーケティングなどのコンサルティングを行っています。映像分野では、一仲間と制作した作品が第一回SDGsクリエイティブアワードで部門大賞を受賞。ほかにも北海道の委託事業等で地域の魅力を高める活動をされています。田中氏のこれまでの経験から、社会によりインパクトを与えるマーケティングのヒントについて学びました。 まずは代表の村上より、ニセコ町で進んでいるSDGsモデル街区の進捗についての情報共有。ニセコ町は「NISEKO生活モデル地区構想事業」を含むSDGs未来都市計画を策定しており、2018年に「SDGs未来都市」として内閣府から採択されました。日本各地で人口減少が加速化しているのに、ニセコ町では人口が維持され、同時に核家族化の進展により、世帯数が大幅に増加しています。ニセコ町への移住希望者はもとより、ニセコ町で働いている地域の住民も、町内に住める住宅がなく町外から通っている人もたくさんいます。 2050年脱炭素社会に向けて、ニセコ町が重要視している取り組みは、「脱炭素型の集合賃貸住宅」をつくること。従来の社会福祉的な機能を持つ公営住宅とは別に、地域の中でこれ以上人口減少を加速させないためにも、脱炭素型である程度品質のいい集合住宅を整備する必要があります。この整備を急ぐ理由は、30代など若い世代がローンを組んで新築の家を建てるのが難しい時代になってきていることもあります。建築費はこの3年間で急騰し、普通に働いている人ではローンを組んで新築の家を建てることが難しくなっています。地域で賃貸住宅がなければ、移住者の増加も望めません。 この約10年で日本の人口は激減し、各自治体は人口ビジョンを作り、人口が減っていくことを前提に政策を考えてきました。しかし、都市計画やまちづくり、住宅政策の場面での問題は、人口数の推計はあっても「世帯数」の将来推計がほとんどの自治体にないこと。人口減少の進行と同時に核家族化が進んでいるので、実は世帯数はあまり減らない、横ばい、あるいは微増になっていき、大きくは減らないケースも多々あります。また高度成長期に大量に供給されたことを理由として、空き家はあっても、手直しして住めるような状態のいい家は残っていない、という状況がいろんな自治体で起きつつあります。 これらのことから、多くの自治体では、いずれ世帯数と住宅ストック数のミスマッチが起きるでしょう。2030年頃には、住める家がなく賃貸住宅のある都市部に人が移り、人口減少が加速化する自治体が増えていく恐れがあります。ですから、CVは率先してニセコ町とタッグを組み、町営住宅だけでは手の届かない住宅政策を担う会社として「株式会社ニセコまち」をつくり、高性能の集合住宅の街区を手がけています。 次に田中氏より、実際に5年前から取り組んでいる「NISEKO生活モデル地区構想事業」の住宅地、「ニセコミライ」のプロジェクトでどのように地域の人にまちづくり会社を知ってもらい、関係を築いてきたかについて。街区開発を担う「株式会社ニセコまち」は、ニセコ町と地域企業、クラブヴォーバンの共同出資で設立し、田中氏は取締役として関わっています。最初から意図してやったわけではないが、やってみて結果的によかったことを皆さんに共有するので、ぜひ1つでも役に立ててもらえれば、とのことでした。やってよかったことは、難易度A・B・Cの難易度別に、具体例を交えながら解説がありました。また、失敗談や、地域や地方に対する誤解や落とし穴、地域を巻き込んでいく上で大切だと思う考えなども共有されました。
2023/11/17
2023年10月、第7回目となる自治体相互視察は、クラブヴォーバン自治体正会員の北海道下川町で開催されました。2015年、第一回目のクラブヴォーバン自治体相互視察で下川町を訪問し、今回2巡目の訪問となりました。今回は正会員自治体のニセコ町、二戸市、北栄町とクラブヴォーバンスタッフで訪問し、下川町職員の方あわせて約25名の参加でした。...